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STAP細胞を通して、科学を知るby:茂木健一郎

by:茂木健一郎 (kenichiromogi)さんはTwitterを使っています

(1)このところの社会的事象を見ていて思い出したのは、シェーン事件である。これは、1970年生まれ、コンスタンツ大学で博士号の学位をとったJan Henrik Schönが、多くの画期的な成果を上げ、大スターになった後に、そのデータが偽造であることが判明したスキャンダル。
(2)シェーン事件のスケールは大きく、科学界で最も権威があると言われる両雑誌、ネイチャー、サイエンスに掲載された、ぞれぞれ7本、8本の論文が撤回された。発覚したきっかけは、全く別の実験のデータのノイズの構造が、偶然ではあり得ないくらい一致したことであった。
(3)シェーンは、最盛期には「8日に一本」の論文を書いていたという。その研究がもし本当ならばノーベル賞間違いなしという大成果であったが、結局全部捏造だとわかった。他の研究室が追試しようとして、うまく行かず、最終的にデータはすべて作ったものだとばれた。
(4)脳科学、認知科学に近い分野だと、ハーバード大学の教授をしていたマーク・ハウザー氏によるデータ捏造事件がある。発覚のきっかけは、内部告発。大学院生が、「もううんざりだ」「いつもパターンがあるんだ」と大学当局に通報したことでばれたのだという。
(5)ハウザー教授がオーストラリアの学会に出席している時に、ハーバードのスタッフが来て、教授のパソコンのハードディスクを押収。調査の結果、裏付けのないデータ、偽造したと思われる実験が見つかって、ハウザー教授は辞任した。斯界のスターだっただけに、衝撃を与えた。
(6)ハウザー教授の研究の一部には、以前から疑念が持たれていた。たとえば、 ワタボウシタマリンという猿が、鏡の中の自分を認識できるという論文には、この分野のパイオニアであるギャラップJr氏が疑念を示した。証拠のビデオを見せろと迫ると、「消してしまった」と答えたという。
(7)このように、データの偽造や、研究の偽装は、残念ながら科学界に時々現れる。しかし、そのような瑕疵(かし、「欠陥、キズ」とほぼ同じ意味)が発見され、修正されるという点にこそ、科学の科学たるゆえんがあると言えるだろう。自然の真実の前では、権威やスターも失墜する。それが、科学のスピリットである。
(8)さて、以上のようなことを連想するきっかけになった「STAP細胞」の研究について、それが本当にある事象なのかどうかは、今後の追試の結果などを通して明らかになるだろう。一方、論文そのものについては、データの不備などを鑑みて、撤回する以外の選択肢はないと考える。
(9)以上のような科学の瑕疵修正手続きは、科学者にとっては半ば常識であるが、今回のSTAP細胞をめぐる一連の事態を通して、一般の社会にも知られるようになったのは、意味があることだと思う。瑕疵があった時、それを修正する勇気があるからこそ、科学は科学であり続けるのである。

以上、連続ツイート1194回「STAP細胞を通して、科学を知る」でした。

by:茂木健一郎 (kenichiromogi)さんはTwitterを使っています